社労士が思う、福利厚生で賄いごはん!!
みなさんこんにちは。ディライト社会保険労務士事務所の正躰です。
先日、パートナー事業所の方から、
「職員に福利厚生として、事業所で作ったご飯を食べて欲しい!!」
という、素敵なお話がありました。
代表が、職員を大切にされる気持ちに・・・感動!!
ただ、以前のそれまた以前、社労士になる為の勉強中に
「賄いのご飯て、全額会社負担は給与(現物支給)扱いになるんだー!!」
って驚いたことを思い出し・・・良い機会なので改めて確認しました。
結論から言うと
「全額会社負担の賄いは、給与(現物支給)扱いになる」
というものでした。
では、給与(現物支給)扱いになると、何が影響するかというと、大きく分けて以下の2点。
1.社会保険(厚生年金保険・健康保険)上の影響
2.所得税上の影響
(社労士勉強した際の記憶は、1の社会保険上の影響の部分を薄ら覚えしていたみたいです!!)
1.社会保険(厚生年金保険・健康保険)上の影響については、
給与(現物支給)扱いになるということは、健康保険料、厚生年金保険料の計算の基礎となる、
標準報酬算出の際に、基礎となる給与(賃金)に現物支給額が算入されるので、結果、標準報酬が高くなる可能性があります。詳細はこちらに記載があります。
日本年金機構 令和7年4月から現物給与の価額が改正されます
では、社会保険(厚生年金保険・健康保険)上の影響を回避するにはどうするかという点ですが、
こちらは現物支給額(実価格ではなく、都道府県で定められた額。神奈川県の昼食額であれば280円)の3分の2以上の額を食事代として職員が負担れば、現物による食事の供与はないものとして取り扱われるので、標準報酬にも影響がでません。
つづいて、
2.所得税上の影響についてですが、こちらは所得税法にで定められており、
詳細はこちらに記載があります。
No.2594 食事を支給したとき|国税庁
こちらも以下の条件を満たすことで、給与(現物支給)としてみなされなくなります。
①従業員が食事の価額の半額以上を負担していること
会社が提供する食事の価額(実費相当額)のうち、従業員がその半額以上を負担している場合、
その食事の提供は「給与」として課税されません。
たとえば、1食あたりの実費が600円であれば、従業員が300円以上を負担していれば、課税対象外となります。
②次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が
給与として課税されます。
福利厚生としての賄い提供・・・厳密にいうと、上記のような条件をクリアして始めて行えるのです。
何がややこしいかと言うと、社会保険上と所得税上、双方の要件を満たさなければならない点、
さらに言うなら、社会保険上は給与(現物支給)額の3分の2以上の額を食事代として職員が負担、
所得税法上は会社が提供する食事の価額(実費相当額)のうち、従業員がその半額以上を負担、
と、一見は社会保険上の負担額が大きく思えますが、
社会保険上では基準額(神奈川県の昼食額であれば280円)に対しての、3分の2以上額を職員が負担。
それに対して、所得税上の自己負担額は食事の価額(詳細はNo.2594 食事を支給したとき|国税庁参照)に対して従業員がその半額以上の負担が必要とのことで、実質は所得税法上の自己負担額が高くなる場合が多いという所にあります。
でも、上記を無事にクリアできれば、職員へ福利厚生として賄いごはんを提供することが可能です。
ビジネスライクな関係が蔓延する世の中に、このような職員への思いやりがある福利厚生がある会社で自分も働きたいと思うこの頃でした。
と、締めくくろうとした途端、以下のような記事を発見・・・
「賄いごはんを食べる時間は、労働時間に当たるのか」
「賄いごはん=休憩時間に食べるもの」
という、凝り固まった概念しか無かった私には、
全くもって驚愕したものの、次回は、このあたり調べて報告したいと思います。
以上
出典:
・国税庁「No.2594 食事を支給したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm
・日本年金機構「2025年度(令和7年度)標準報酬月額に算入すべき現物給与の価額」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150511.files/2025.pdf
