19箇条の「絶交状」が突きつける現代の闇:信長の折檻状に学ぶ「人格否定」の末路 byケアマネ社労士@横浜

みなさんこんにちは。ディライト社会保険労務士事務所の正躰です。

歴史的な事例を現代の法令に照らし合わせる。歴史系社労士のケアマネ社労士!!が送る
「歴史から学ぶ労務管理シリーズ」第5回目です。

第5回目もパワハラ界のカリスマ!!織田信長さん!!の登場です。
織田信長さんから佐久間信盛さんに突きつけた19箇条の「絶交状」について、現在のハラスメントに照らし合わせ考察したいと思います。

なお、このシリーズで扱う内容は一般的によく知られている歴史的な事象を題材にしています。そのため、厳密な史実とは異なる部分もあるかもしれませんが、その点は何卒ご容赦いただき、楽しんで読み進めていただければ幸いです。

◆事例紹介:30年の功績を全否定した「19箇条の叱責」

 天正8年(1580年)、織田信長は長年組織を支えてきた筆頭家老・佐久間信盛に対し、突如として19箇条にわたる猛烈な叱責状(折檻状)を突きつけました。内容は、「直近の戦果が乏しい」「若い頃に比べて意欲が低い」「部下の活用が下手だ」といった、信盛のこれまでの人生とプライドを粉々に打ち砕くようなものばかり。信長はこの書状を他の家臣たちの前で公表し、信盛を親子共々、高野山へ追放しました。これは、「成果が出ない者は、過去の功績がどれほどあろうとも無価値である」という極端な成果主義が招いた、公開処刑という名のハラスメントです。

◆もはやリストラではなく「処刑」。19箇条の罵詈雑言が壊したもの

 信長が突きつけた折檻状は、単なる業務上の改善指導ではありませんでした。30年以上も組織に貢献してきたベテランに対し、「お前はただ座っているだけだ」「欲深く、ケチだ」といった、人格そのものを否定する言葉が並べ立てられました。
 現代の視点で見れば、これは指導の範囲を完全に超えた「精神的な攻撃」であり、「人間関係からの切り離し(不当な解雇・追放)」です。信長という圧倒的権力者が、組織全体に見せしめる形で放ったこの言葉の暴力は、残された家臣たちに「明日は我が身」という恐怖を植え付け、組織の忠誠心を根底から揺るがしました。

◆現代なら完全な「不当解雇」と「パワハラ」。信長の手法を法的に斬る

信長の折檻状を現代の労働基準法やパワハラ防止法に照らし合わせると、複数の違法性が浮かび上がります。

  • 精神的な攻撃(人格否定): 業務上のミスではなく、性格や生き方を否定する言動は、社会通念上許容される範囲を超えたパワハラです。
  • 不当な低評価と解雇: 直近の成果のみを捉え、これまでの功績を無視して一方的に解雇(追放)することは、客観的合理性や社会的相当性を欠く「解雇権の濫用」にあたります。
  • 公開処刑によるプライバシー侵害: 他の社員の前で欠点を列挙した書面を公表する行為は、名誉毀損や就業環境を著しく悪化させる行為です。

◆あなたの職場にある「19箇条の折檻状」。ベテラン排除の危険な予兆

刀は出てこなくても、現代のオフィスには「折檻状」に似た陰湿な行為が溢れています。

  • 「成果が出ていない」を盾にした人格否定: 成績が落ちた社員に対し、人格を疑うような言葉を全社員が見えるチャットツールなどで送信する。
  • ベテランへの「窓際追い出し」: 過去の貢献を無視し、突然無理難題を押し付けて、失敗した瞬間に「能力不足」として退職に追い込む。
  • 過去の功績の完全抹消: 新しいリーダーが来た途端、前任期までのやり方や功績を「すべて無駄だった」と否定し、古参社員の居場所を奪う。

これらは、組織の「知恵(経験値)」を捨て去り、社員の意欲を枯渇させる自滅行為です。

◆「沈黙の追放」を許さない。尊厳を守るためのセルフディフェンス

もしあなたが「佐久間信盛」のような境遇に置かれたら、どう動くべきでしょうか。

  1. 「指導」と「否定」を仕分ける: 指摘されている内容が「具体的な行動(改善可能)」か「人格・性格(改善不能)」かを見極めます。後者であれば、それは指導ではなく攻撃です。
  2. 客観的な「功績の棚卸し」を記録する: 相手が過去を否定してきても、自分自身の貢献(いつ、どのような成果を出したか)をデータやメールとして保存しておきましょう。これが不当な低評価に対する最大の反論材料になります。
  3. 公開処刑には「公的な記録」で対抗: 人前で罵倒されたり、屈辱的な書面を回された場合は、その状況を録音、または日時・場所・同席者を詳しく日記に付け、専門家に相談する準備を整えてください。

◆各視点での対応策:第二の「佐久間信盛」を生まないために

「折檻状」の悲劇を繰り返さないための、各層へのメッセージです。

  • [経営層]: 成果主義は重要ですが、過去の功績を無視した「減点主義」のみの評価は、組織を硬直化させます。 社員が「一度でも失敗すればすべてを失う」と恐怖を感じれば、挑戦もイノベーションも生まれません。適正な「加点評価」と、ベテランの経験を活かす仕組みづくりを重視してください。
  • [管理層]: 部下への叱責と人格否定は全くの別物です。「人前での叱責」は、指導ではなくただの感情の発散であり、教育効果はゼロです。 改善を求めるなら、プライバシーが守られた場所で、事実に基づいた「フィードバック」を行うこと。感情的な言葉の暴力は、マネージャーとしての能力不足を露呈しているに過ぎません。
  • [社員層]: 会社や上司があなたの過去を否定したとしても、あなたの価値が消えるわけではありません。理不尽な攻撃に対しては、感情的にならずに「記録」という武器を持ってください。 自分の心の安全を第一に考え、必要であればその組織から「戦略的撤退」をすることも、自分を守る立派な勇気です。

以上にて、「佐久間信盛への折檻状」をパワーハラスメントの視点で考察しみてみました。

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