【ケアマネ社労士が解説】有償ボランティアに最低賃金は必要?労働者性とみなされないための4つの実務ポイント。byケアマネ社労士@横浜
みなさんこんにちは。ディライト社会保険労務士事務所の正躰です。
以前、有償ボランティについての注意点を記載したところ、非常に反響が高く、
その割に内容がいまいち充実してないことを反省して、再度「有償ボランティと最低賃金の決定版!!」として内容を充実させてみました。皆様、是非参考にしてください。
では!改めて!!
「ボランティアの方に少しでも謝礼を渡したい。でも、これって給料になるの?」 介護・障害福祉の現場で、一度は悩むテーマではないでしょうか。
最近、私の顧問先からも「有償ボランティアを導入したいが、最低賃金などの労務トラブルが怖い」というご相談をいただきました。横浜で介護の現場に立ち、現在は社労士として多くの施設をサポートしている私が、一次情報(実体験)に基づいた「有償ボランティアの落とし穴」を徹底解説します。
なぜ今、有償ボランティアが注目されているのか?
深刻な人手不足の中、地域の元気な高齢者などが「支え手」に回る新しい仕組みとして、有償ボランティアへの期待が高まっています。「無償」では頼みづらい、しかし「雇用」するのはハードルが高い……そんな現場のニーズに応える切り札です。
しかし、一歩間違えると「隠れ雇用」とみなされ、未払い賃金や労務トラブルに発展するリスクもあります。AI時代においてGoogleが評価する「E-E-A-T(専門性・経験・権威性・信頼性)」の観点からも、正しい知識を整理しておきましょう。
1. 「労働者」とみなされる4つの判断基準
行政や裁判所は、名称がボランティアであっても、以下の「実態」を厳しくチェックします。
- 指揮命令の有無 :「○時にこの作業をしてください」と細かく指示を出すと労働者とみなされます。
- 拘束性の有無 :勤務場所や時間が厳格に決められ、欠勤に正当な理由を求めると労働者性が強まります。
- 報酬の対価性 :支払うお金が「働いた時間の対価(時給)」になっていませんか?
- 代替性の有無 :「あなたじゃないとダメ(専属)」という契約は雇用に近くなります。
2. 【みなさんからの疑問】教えて!ケアマネ社労士さん
現場でよくいただく質問として以下の様なものがあります。
Q1:時給換算で最低賃金ギリギリを支払えば問題ないですか?
A:実は、それが一番危険です!
金額が最低賃金に近いと、実態が「労働」であると強く推認されます。ボランティアであれば、時給ではなく「1回あたりの謝礼」として、実費(交通費)+αの範囲に留めるのが実務上の定石です。
Q2:ボランティアが活動中にケガをした場合、労災は使えますか?
A:原則として、労災保険は使えません。
労災はあくまで「労働者」のための保険です。そのため、有償ボランティアを受け入れる際は、施設側で「ボランティア行事用保険」などに加入し、万が一の事故に備えておくことが経営上のリスク管理として不可欠です。
Q3:謝礼を支払う際、源泉徴収(税金)は必要ですか?
A:実費弁償の範囲を超え、「対価」とみなされる場合は必要になることがあります。
交通費などの実費精算であれば非課税ですが、定期的に一定額を支払う場合は「雑所得」や「給与所得」とみなされる可能性があります。金額や頻度によりますので、事前に税理士さんや税務署へ確認することをお勧めします。
Q4:ボランティアの方に「身体介助」をお願いしてもいいですか?
A:おすすめしません。重大な事故や、資格の問題に発展する恐れがあります。
食事・入浴・排泄などの身体介助は、専門的な知識と責任が伴う「業務」です。これをお願いしてしまうと、「指揮命令」が強くなり労働者とみなされるだけでなく、事故時の責任の所在が曖昧になります。ボランティアの方には、あくまで「周辺業務(お話し相手や準備補助)」をお願いするのが安全です。
Q5:一度「有償ボランティア」として始めた人を、途中で「アルバイト」に変えてもいいですか?
A:もちろん可能です。むしろ、採用ミスマッチを防ぐ「プレ雇用」として非常に有効です。
ボランティアとして活動する中で「もっと本格的に働きたい」という希望があれば、改めて雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を支払う「アルバイト」へ切り替えるのは、採用ミスマッチを防ぐ素晴らしい手法(リファラル採用に近い形)と言えます。
Q6:有償ボランティアの方を、介護保険の人員配置基準の「1人」にカウントできますか?
A:原則として、カウントすることはできません。
人員基準にカウントできるのは、原則として「直接雇用」または「派遣」による労働者です。ボランティア(有償・無償問わず)は、本来「基準以外のプラスアルファの存在」です。 もし人員基準に含めてしまうと、その時点で「業務遂行の義務」が生じているとみなされ、ボランティアではなく「労働者(雇用)」と判定される可能性が極めて高くなります。
3. 【実例】横浜市内のデイサービスでの導入ケース
私が実際に相談を受けた事例や、地域での運用モデルをベースにした3つのケースをご紹介します。
【ケース①】人手不足を解消!「周辺業務」の切り出しに成功したAデイサービス
- 背景: 介護職員が掃除やお茶出し、レクリエーションの準備に追われ、本来の専門業務である「個別ケア」に時間が割けていなかった。
- 導入内容: 近隣の60代〜70代の元気なシニア5名を「地域サポーター」として受け入れ。
- 運用の工夫: 1回の活動(約2時間)に対し、交通費+謝礼として一律1,500円を支給。シフトは作らず「前日までに連絡があればOK」という緩やかなルールに。
- 結果: 職員の残業が月平均5時間減少し、離職率も改善。「プロにしかできない仕事」と「地域の方に手伝ってもらう仕事」の仕分けが明確になりました。
【ケース②】事故リスクを回避!「ボランティア規約」を徹底したB通所リハビリ
- 背景: 以前ボランティアが利用者の転倒に立ち会った際、責任の所在が曖昧になりトラブルになりかけた経験があった。
- 導入内容: 「ボランティア活動合意書」を全員と締結。活動内容を「お話し相手」と「配膳の補助」に限定し、身体介助は厳禁であることを明文化した。
- 運用の工夫: 施設負担でボランティア行事用保険に加入。謝礼は「QUOカード」等の物品支給にすることで、給与(労働対価)としての性格を薄める工夫をした。
- 結果: ボランティアの方も「どこまでやっていいか」が明確になり、安心して活動できる環境が整いました。
【ケース③】採用コストを削減!ボランティアから「雇用」へ繋げたC事業所
- 背景: 求人サイトに広告を出しても応募がゼロ。採用コストばかりがかさんでいた。
- 導入内容: 地域向けに「有償ボランティア体験会」を実施。まずは週1回、短時間の活動からスタートしてもらった。
- 運用の工夫: ボランティアとして半年継続し、業務への理解が深まった段階で「パート採用」への切り替えを打診する「体験型採用(プレ雇用)」として活用。
- 結果: この1年でボランティアから2名がパート職員として入職。現場を理解した上での採用のため、ミスマッチがなく即戦力として活躍しています。
4. 報酬(謝礼)の具体的な目安
有償ボランティアを運用する上で、最も神経を使うのが「お金」の扱いです。読者の皆様が今日から使える、実務上の目安と判断基準をまとめました。
| 項目 | 金額の目安 | 性格・注意点 |
| 交通費(実費) | 500円〜1,000円程度 | 実費精算であれば「賃金」にはあたりません。公共交通機関の実費や、ガソリン代相当額を支給します。 |
| 活動謝礼(1回) | 1,000円〜2,000円程度 | 【最重要】「時給」ではなく「1回あたり」の設定にしてください。活動時間が2時間でも3時間でも定額にすることで、労働対価性を低めます。 |
| ポイント制 | 500ポイント程度 | 商品券やカタログギフトと交換する形式。自治体の「介護ボランティアポイント制度」に準じた運用は、対価性が低いと認められやすい傾向にあります。 |
【ケアマネ社労士の補足アドバイス】
① 「1回あたり」の設定を強く推奨する理由
労働基準法における「労働者」とみなされる最大の引き金は、「働いた時間に比例して報酬が増えること(時給制)」です。「1時間1,000円」としてしまうと、それはもはやアルバイトと同じと捉えられます。 「午前の活動(2〜3時間程度)に対して一律1,500円」といった【日額・回数払い】の形式をとることが、法務リスクを避けるコツです。
② 最低賃金との逆転現象に注意
例えば、2時間の活動に対して2,500円支払うと、時給換算で1,250円となり、地域の最低賃金を上回る可能性があります。金額が高すぎると、ボランティアではなく「高給な労働者」とみなされ、税務署からも給与所得として課税対象にするよう指摘されるリスクが生じます。あくまで「社会貢献に対するお礼(実費弁償)」の範囲内に収めることが肝要です。
③ 支払いの名目は「謝礼金」や「ボランティア手当」に
帳簿上の勘定科目も「給与」ではなく、「諸謝金」や「福利厚生費」などで管理し、雇用関係ではないことを会計面からも整合させておきましょう。
5. ケアマネ社労士としての所感:善意をリスクに変えないために
私がケアマネジャーとして現場を見てきた経験から言えるのは、有償ボランティアは単なる「安い労働力」ではないということです。 ボランティアの方々は、プロにはない「地域住民の目線」を持っています。その温かさが利用者様の「社会との繋がり」を再確認させてくれます。
だからこそ「善意に甘えすぎない」ことが大切です。 「ボランティアだから契約書はいらない」という考えは、万が一の事故の際に誰も守ることができません。正しいルール(合意書)の上での活動こそが、施設・ボランティア・利用者の三方を守ることに繋がります。
◆この記事を読み終えた皆様へ
有償ボランティアは、正しく理解して活用すれば、人手不足解消の強力な武器になります。
「うちは大丈夫かな?」と不安な方は、ぜひディライト社会保険労務士事務所へご相談ください。
現場の痛みと法的な守り、両方の視点から最適な運用プランをご提案します。
以上



