介護事業所が押さえておきたい労務管理の10ポイント byケアマネ社労士@横浜
みなさんこんにちは。ディライト社会保険労務士事務所の正躰です。
先日、お客様より
「先月入職した職員が、勤怠について質問してきて・・・」
とのご相談を受けました。
その職員方は、前職で労務研修等があり、
労働時間についての法律的なポイントを押さえておられ、
8月に提示したシフトについて疑問を持った様子でした。
(シフトを確認したところ、結果問題無かったのですが・・・)
最近はどんな事でも情報が簡単に手に入り、
その情報を元に自身の状況を比較し、
疑問に思う職員が多いように思います。
各事業所もそのような職員に対して、
しっかり回答が行えるよう、
事業所の労務管理について再度見直す必要があるのかと思います。
簡単にですが、介護事業所における労務管理ポイント
10選をピックアップしてみました。皆様の参考になれば幸いです。
1. 労働時間管理
介護事業所では24時間体制が多く、変形労働時間制やシフト勤務が不可欠です。しかし労働基準法に基づかない運用は、時間外割増未払い・過労リスクにつながります。対策としては①シフト作成時に法定労働時間(週40時間)を守る②夜勤回数や連続勤務の上限を設ける③勤怠システムを導入し打刻・残業申請を可視化する、などが有効です。特に夜勤明けの「中抜け勤務」は違法性が高いため排除が必要です。ICTを活用し、労働時間の実績をデータで管理することがトラブル予防につながります。
2. 休日・休暇制度
介護現場ではシフト制のため、休暇取得が後回しになりがちです。有給休暇の年5日取得義務を守るとともに、希望休やリフレッシュ休暇制度を導入することで職員満足度が高まります。具体案としては①シフト作成時に必ず有給希望を確認する②半日有給や時間単位年休を活用し取得率を上げる③業務繁忙期に代替要員を確保する、などがあります。休暇が取りやすい体制は離職防止に直結し、採用時の魅力にもなります。
3. 時間外労働の適正化
介護業界は人手不足により残業が常態化しやすい分野です。36協定を締結し、法定上限(月45時間・年360時間)を超えない運用が不可欠です。対応策として①会議や記録業務は業務時間内に組み込む②定型業務は分担やICTで効率化する③慢性的残業部署には人員配置を見直す、などが考えられます。また、残業を命じる際は理由を明示し、自己申告残業を防ぐために上司が勤怠を確認する体制を作りましょう。
4. 処遇改善加算と賃金設計
介護職員処遇改善加算や特定処遇改善加算は、職員の賃金改善とキャリアアップの要件が課されています。これを適切に反映しないと加算返還リスクや不信感につながります。具体案は①就業規則・賃金規程に加算手当を明記②支給方法を「基本給に組込む」「手当で上乗せ」など透明化③キャリア段位やリーダー職に応じて評価基準を示す、などです。公平性・明確性を確保することで、職員の定着を促せます。
5. 雇用契約と就業規則
雇用契約書は雇用形態・勤務時間・業務内容を明確にし、トラブル予防に不可欠です。就業規則も常勤・非常勤の働き方や現場ルールに即したものを整備すべきです。具体的には①契約更新時に条件を説明し、書面交付を徹底②試用期間の取扱いや兼業禁止なども明記③変更時は職員説明会を行い、周知を徹底する、などです。曖昧さを残さず「透明性のある労務管理」を実現することが重要です。
6. ハラスメント防止策
介護現場は上司・同僚間だけでなく、利用者・家族からのハラスメントも課題です。パワハラ防止法に基づき、事業所は相談窓口の設置や対応マニュアル整備が必要です。具体策は①相談窓口を複数設置し匿名相談可能にする②定期的にハラスメント研修を実施③利用者家族に向けた説明や契約書への禁止条項明記、などです。職員を守る仕組みは、安心して働ける環境づくりに直結します。
7. 安全衛生管理
介護職は身体的・精神的負担が大きいため、衛生管理は必須です。腰痛予防や感染症対策は特に重要です。対策案として①リフトやスライディングシートなど福祉用具を導入②インフルエンザ・新型コロナなど感染症マニュアルを整備③メンタルヘルスチェックを定期実施し産業医と連携、などが挙げられます。安全で健康的な職場環境を維持することは、職員の離職抑制と利用者サービスの質向上につながります。
8. 人材育成と研修制度
介護職員のキャリアパスを明確にし、継続的な研修体制を整備することは、処遇改善加算の要件でもあります。具体策は①OJTで新人を先輩職員がサポート②資格取得支援制度(介護福祉士・ケアマネなど)を設ける③管理職研修を実施しマネジメント能力を高める、などです。キャリア形成を後押しすることで職員の意欲向上と離職防止が実現します。
9. 多様な働き方への対応
育児や介護との両立を支える柔軟な働き方は、人材確保に直結します。具体策として①短時間正社員制度の導入②副業・兼業の許可制度を検討③在宅勤務やICT活用による記録業務のリモート化、などがあります。働きやすさを高めることで、優秀な人材が長く働き続けられる環境を整えることができます。
10. 行政対応と法令遵守
介護保険法・労基法の双方を遵守することは、事業継続の基本です。監査や指導時には勤怠記録・賃金台帳・研修記録などが確認されます。具体策は①記録を3年間以上保管②監査に備えマニュアルを整備③法改正情報を定期的に社労士と共有する、などです。事前準備を徹底し、法令遵守を組織文化として根付かせることが重要です。
何かヒントになることはありましたか!?
人事労務管理に問題を抱えられている事業所の方、
具体的な対策等を検討したい事業所の方などおられましたら、
ディライト社会保険労務士事務所までご連絡ください!!
以上
